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006 — 制度 / 2026.10.24

摩擦は、なぜ必要なのか――デジタル化が負担を増やす理由

Vol.06 / 2026年10月号(主文)

行政のデジタル化は摩擦を減らすはずが、負担を市民に移す。ノルウェーの自助サービス研究、英国の規制負担£22.4bn、医療の事前承認、日本のオンライン化率48.2%対利用率28.9%から、どの摩擦を誰のために残すかを問う。

滑らかなガラスの通路に、一枚の申請書と「確認」ボタン、時計が置かれたイメージ図。

摩擦は、なぜ必要なのか――デジタル化が負担を増やす理由

滑らかなガラスの通路に、一枚の申請書と「確認」ボタン、時計が置かれたイメージ図。左側に見出し用の余白がある。
アイキャッチ=イメージ図(筆者作成)

1. 事件:摩擦のない窓口が、窓口をなくす

ノルウェーの生活費支援のオンライン申請は、9つの質問で終わる。だが、そこで終わらない。収入をどう書くか、貯蓄が「収入」に含まれるのか、どの書類を出すのか。最も時間がかかるのは書類の収集とアップロードで、研究は「この段階で申請を中止する人が多い」と報告する。利用には電子ID(BankID)が必須。申請者は、制度の言葉を自分で解釈し、書類を揃え、アップロードの失敗と格闘する。

窓口の職員は、かつてこの仕事の一部を引き受けていた。質問を聞き、書類を確認し、足りないものを説明する。デジタル化は、その時間を職員から市民へ移した。職員の事務は減り、市民の時間は増える。摩擦は消えていない。移っている。

日本でも、同じことが起きている。デジタル庁の令和7年度調査(2026年8月公表)によれば、地方自治体等の行政手続はオンライン化率48.2%、利用率28.9%。約19ポイントの差がある。国の手続は73.9%・78.5%だから、地方の落差が大きい。80歳以上のインターネット利用率は37.1%で、全体の85.7%とは20ポイント以上離れている。

奈良市の生活保護業務では、収入申告12,240件のうち電子申請は2,132件(17.2%)、預貯金照会16,544件のうち電子化は6,217件(37.5%)。職員の照会期間は約2週間から最短3日に短縮された。職員の事務は減ったが、受給者本人の利用率は2割弱である。

摩擦のない窓口は、誰の摩擦を減らしたのか。そして、減らした摩擦は、どこへ行ったのか。

2. 数字:摩擦は消えず、移る

摩擦の移動を、三つの現場で見ておきたい。

行政の会計。 英国政府は2025年10月、企業に対する規制の行政負担のベースラインを年£22.4bnとし、議会任期末までに25%(£5.6bn)を削減する目標を確認した。2026年7月時点で、総削減£2,632m、新規負担£589m、純削減£2,043m。目標の3分の1超である。だが、これは企業の事務コストであり、市民が行政手続に費やす時間は含まない。企業の負担を測る£の物差しはあっても、市民の時間を測る物差しは予算にない。

医療の事前承認(PA)。 米国医師会(AMA)の2024年調査では、医師1人あたり週39件、医師とスタッフで週13時間のPA事務が発生する。医師の82%が「PAは少なくとも時々、治療の放棄につながる」と回答した(これは医師の認識であり、患者の82%が放棄したという意味ではない)。93%がケアの遅延、94%が臨床結果への悪影響、89%が燃え尽きへの寄与を挙げている。2025年調査では、週40件、13時間、79%が治療放棄、60%が「AIが否認率を高める」と懸念した。

AI窓口。 Gartnerの2023年調査(5,728人)では、64%が「顧客対応にAIを使ってほしくない」と答え、53%がAI導入企業への乗り換えを検討した。最大の懸念は「人に到達しにくくなること」だった。2026年の調査では、49%がチャットボットを使う意向を示す一方、直近の対応で実際に使ったのは7%。否定的な経験の後に再び試す気になるのは27%で、87%が「AI利用時は人間へのアクセスが不可欠」と答えた。

行政・医療・AI窓口・解約の四つの現場で、摩擦が制度側から市民・患者・利用者側へ移ることを示す図。
図1: 摩擦はどこへ移ったか――削減の会計に載る摩擦から、載らない摩擦へ。図は筆者作成(資料: デジタル庁 令和7年度調査、UK Parliament HCWS975、AMA 2024/2025、Gartner 2023/2026)

四つの現場に共通する構造は、こうだ。摩擦は、測定できる側から、測定できない側へ移る。 職員の事務時間、保険者の審査コスト、事業者の一次対応コストは、予算と人員の数字に載る。市民の待ち時間、患者の治療放棄、利用者の諦めは、載らない。だから、載る摩擦から先に削られる。

3. 摩擦の四類型

「摩擦は善か悪か」という問いは、生産的でない。摩擦には種類があり、種類によって評価が変わる。ここでは四つに分ける。

構成的な摩擦。物質性、身体、距離、言語、他者の抵抗。原理的に消せない。待ち時間ゼロの社会は、現実には存在しない。

認識的な摩擦。予想外れ、故障、異議。世界を可視化する。エラー表示は、普段は見えない制度の参照連関を露出させる。

制度的な摩擦。審査、待機、熟議、冷却期間。正当化されうるが、政治的に設計される。PAも、本人確認も、撤回ボタンもここに入る。

収奪的な摩擦。重複書類、たらい回し、理解不能な様式、電話のみの解約。特定の層に偏り、正当化されない。

摩擦を四類型(構成的・認識的・制度的・収奪的)に分け、それぞれ消せるか、誰のためかを示した図。
図2: 摩擦の四類型――消せるか、誰のためか。図は筆者作成(資料: Dewey、Heidegger、Arendt、Sunstein、Hirschman ほか)

この四類型で見ると、デジタル化が何をしたかが見える。制度的な摩擦のうち、保護のためのものを「不要」の名で削り、収奪的な摩擦を新しく市民の側に作った。 そして、認識的な摩擦(エラーや異議)を、問い合わせの自動化によって見えにくくした。

摩擦は、善でも悪でもない。誰の時間を守り、誰の時間を奪い、誰が異議を唱えられるかで決まる。

4. 思想史①:抵抗が経験になり、故障が世界を開く

摩擦を「非効率」とだけ見る見方は、経験の哲学と逆行する。

デューイは、抵抗を経験の条件とした。刺激と反応は存在の区別ではなく、目的の達成に関わる機能の区別である(1896)。危ういものと安定したものの結合が、経験された満足の条件であり、行く手に何も抵抗がなければ、充足は「何も充足しない」。

「if there were nothing in the way, if there were no deviations and resistances, fulfillment would be at once, and in so being would fulfill nothing, but merely be.」(もし行く手に何もなく、逸脱も抵抗もなければ、充足は即座に訪れ、そうであることによって何も充足せず、ただ存在するだけだろう)

デューイにとって、探究は不確定な状況を確定したものへ変換する営みである。不確定な状況は、探究に付されて初めて「問題的」になる。負担は、それ自体ではまだ問題ではない。 苦痛や混乱は、誰かが名づけ、比較し、変えうるものとして定式化して初めて問題になる。負担に押しつぶされた人ほど、それを問題として名づけられない。

ハイデガーは、道具が「使える」ときには見えず、壊れたときに世界が現れると言った。

「Mit diesem Ganzen aber meldet sich die Welt.」(そしてこの全体とともに、世界が名乗り出る)

行政手続きが問題になるのは、普段は見えない制度の参照連関——どの書類がどの窓口に繋がり、誰の権限で何が決まるか——が、エラーや差し戻しの瞬間に露出するからだ。エラー画面は、制度を可視化する認知的資源になりうる。

ただし、すべての不具合が世界を開くわけではない。単なるノイズ、理不尽なエラー、差別的な拒否もある。故障が開示するのは「世界」一般ではなく、特定の制度の特定の権力関係である。

5. 思想史②:判断には他者が要り、滑らかさは否定性を消す

アーレントは、判断が私的な視点を超えるには、他者の立場を想像のなかで訪れる必要があると言う。

「To think with an enlarged mentality means that one trains one’s imagination to go visiting.」(拡張された思考で考えるとは、想像力を訓練して訪ねさせることである)

判断における摩擦は、他者の存在そのものである。他者は私の自己利益や私的な視点に抵抗し、それを拡張させる。ここでの摩擦は、コミュニケーションの障害ではなく、判断が「私」を超えるための媒体だ。

だが、アーレント自身、公共圏が普遍的でないことを認めている。古代の奴隷、外国人、近代以前の労働者、現代の「職を持つ者や実業家」でさえ、その空間に「生きている」わけではなかった。公共圏への入口そのものが、摩擦によって選別されている。 申請書の複雑さ、言語の壁、待ち時間、身分証の不備は、誰が「現れる」ことができるかを決める。行政的な摩擦は、出現の空間の門番である。

ハン・ビョンチョルは、透明性を「否定性の除去」として定義する。

「Matters prove transparent when they shed all negativity, when they are smoothed out and leveled…」(事柄は、すべての否定性を脱ぎ捨て、平滑化され均されるとき、透明になる)

「Compulsion for transparency flattens out the human being itself… Therein lies the violence of transparency.」(透明性への強制は、人間そのものを平らにし、システム内の機能要素にする。透明性の暴力はそこにある)

摩擦は、遅延、退屈、中断、秘密、非透明性である。滑らかな社会はこれらの「閾の経験」を消すが、経験も判断も、遅延と中断なしには深まらない。

ただし、ここで区別が必要だ。人格の透明性と制度の透明性は違う。人格の透明性はプライバシーを破壊するが、制度の透明性は説明責任を可能にする。行政で守るべきは、人格の非透明性であって、権力の非透明性ではない。「摩擦」はしばしば、権力の不透明性を守る口実になる。

6. 思想史③:sludge を測り、voice を守る

サンスティーンは、不要な摩擦を「スラッジ」と呼ぶ。過剰な、あるいは正当化されない摩擦である。書類の重複、待ち時間、理解困難な様式、繰り返される申請。スラッジは人々が望むことを妨げ、時間・金・尊厳を奪う。彼は「スラッジ監査」を提案する。手続きを分解し、どこにどれだけ負担があるかを測定し、削減の優先順位をつける。

監査は、デューイの「問題化」の技法でもある。不確定な苦情を、比較可能な問題へ変える。ただし、誰が「過剰」を決めるのか。負担は均等ではない。時間・認知・語学・社会関係資本を持つ者は、同じ摩擦を容易に吸収できる。監査は判定の手続きであって、判定そのものではない。

ヒルシュマンは、組織や国家の衰退への反応を、退出(exit)、声(voice)、忠誠(loyalty)に整理した。

「Voice is here defined as any attempt at all to change, rather than to escape from, an objectionable state of affairs…」(声とは、不快な事態から逃げるのではなく、それを変えようとするあらゆる試みと定義される)

声を上げるには、時間、書類、会議、異議申立ての手続きが要る。声のコストが高すぎれば声は衰退し、退出が選ばれる。しかも退出のコストも均等ではない。移動や転職のできる者にとって退出は現実の選択肢だが、そうでない者にとっては声を上げるしかない。

逆説がある。摩擦を減らせば声が強くなるとは限らない。 ワンクリックの退出、無限のスクロール、即時の切り替えは、声を形成する時間を奪う。苦情の手続きや異議申立ての形式は面倒だが、声を記録し集合化する装置でもある。問うべきは「摩擦があるか」ではなく、「その摩擦が声を支えているか、それとも疲弊させるか」である。

7. 可逆性という基準

では、どの摩擦を残すのか。実務的な指針が一つある。可逆性である。

可逆的な操作——元に戻せる操作——には、Undoで足りる。確認ダイアログを重ねると、ユーザーは読まずにクリックする訓練を積む。「どこにでも確認を足すと、読まずにクリックする訓練になる」というUXの指摘は、その通りだ。

不可逆な操作——削除、送金、契約、申請の取下げ——には、確認、冷却期間、名称入力などの摩擦を残す。GitHubのリポジトリ削除が名称入力を求めるのは、誤削除を防ぎ、意図を確認するためである。

面白いのは、摩擦を極限まで下げた設計の中に、取消しのための時間が組み込まれていることだ。Amazonの1クリック購入の特許図面には、「90分以内ならキャンセルできる」という表示が描かれている。摩擦の削減と、取消しの時間窓は、同じ設計の中に共存している。

EUは2026年6月19日から、オンライン契約の14日間撤回権を電子的に行使できる「撤回ボタン」を義務づけた。米国では、FTCのクリック・トゥ・キャンセル規則が2025年7月8日に第8巡回区控訴裁で取り消された。同じ問題に対する正反対の答えである。

分岐点は、時間の主導権だ。冷却期間は、将来の自分が今の自分を拘束するのを防ぐ。解約の困難は、事業者が消費者の退出を遅らせる。どちらも時間を挿入するが、誰がその時間を支配しているかが違う。

8. 日本の現実:デジタル・ファーストが、オンリーになる

日本の問題は「オンライン化率」ではなく「利用率」である。地方自治体は48.2%が対応済みでも、利用は28.9%。約19ポイントの差は、制度の使い勝手と、使える人の分布の問題だ。

80歳以上のインターネット利用率37.1%は、そのまま行政手続からの排除率に近づく。窓口が減れば、「デジタル・ファースト」は「デジタル・オンリー」になる。

生活保護のDXは、二重の摩擦を示す。職員の照会は2週間から3日に短縮されたが、受給者の電子申請率は17.2%。自助を強制すれば、支援が届かない。児童手当の現況届廃止は成功例だ。全員に同じ摩擦を課す設計から、リスクの高いケースだけ確認する設計への転換である。

マイナ保険証への移行(2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新規発行終了)では、受診のたびに何を提示するかを選ぶ必要が生じた。制度の硬直か、窓口の裁量か。現場では、失敗が窓口への往復に変換される。オンライン化は窓口を減らさず、二重化したという観察は、その現れである。

さらに、本人が手続を担えないとき、誰が担うのかという問題がある。支援員が代理でログインしようとしても、本人がパスワードを忘れると詰む。代理アクセスの不在は、デジタル化が「自立できる人」を前提にしていることを示す。

9. 意見圏:摩擦は「誰のコストか」に置き換わっている

RedditのUX・医療・行政コミュニティ(2021〜2026年)を見ると、議論は「摩擦は悪か」から「誰が摩擦のコストを払うか」に移っている。

第一に、UXでは「摩擦=悪」は共有されていない。支持されるのは、高リスク操作の摩擦である。リポジトリ削除の名称入力は「誤削除を防ぎ、意図を確認するためのものだ」と擁護される。低リスクはUndo、中リスクは確認、高リスクは名称入力という段階論が支持を集める。留保は「どこにでも確認を足すと、読まずにクリックする訓練になる」。

第二に、AI窓口の争点は「AIか人間か」ではない。「技術の問題ではない。AIの問題でもない。人員配置の問題だ」が最多コメントだった。幻覚率約10%で人間の確認が外せず、削減は通話あたり約30秒。「人間を外す」話ではなく「人間の負荷を少し下げる」話として語られている。

第三に、医療PAの怒りは、AIが「否認の速度」にだけ使われる非対称に向かう。「保険会社のAIは1.2秒で患者の薬を否認できる」——3年間安定している薬の承認に47分待たされた。AI自体ではなく、検証コストが臨床側の無償労働に転嫁される構造が批判の中心だ。ただし「では誰がやるのか」という実務的反論も高ポイントで対立する。

第四に、行政手続では「不備か設計意図か」が争点になる。「障害を維持するための書類は、障害のない人向けに設計されている」——実行機能を損なう障害に、実行機能を最大限要求する手続。処理側からは「承認の方が楽だ。否認は後で必ず追加作業になる」という反論も出る。悪意ではなく詰まりとして説明する視点である。

日本では、申請自体は簡単だが、受取・連携・認証で詰まり、失敗が窓口への往復に変換される。「マイナポータル連携がほんとクソ」「リダイレクト地獄」——不満の中心はカードではなく、連携のたびに認証と画面遷移を繰り返す導線である。

10. 反論:摩擦は弱い者を排除し、「必要な摩擦」は既得権を守る

ここまで読むと、「では摩擦を残せ」と言いたくなる。だが、三つの留保を置きたい。

第一に、摩擦は弱い者を排除する。申請の複雑さ、待ち時間、書類主義は、資源の少ない人ほど重くのしかかる。米国のMedicaid就労報告要件では1万8,000人以上が保険を失い、資格を失った人の95%は実際には就労中か免除対象だったと推計される。テネシー州の49ページの更新様式では、約25万人の子どもが保険を失った。「必要な摩擦」は、しばしば最も必要とする人を最初に排除する。

第二に、「必要な摩擦」は既得権の口実になる。ハンの透明性批判は強力だが、権力の説明責任を免れる口実にもなる。人格の非透明性を守ることと、制度の不透明性を守ることは違う。摩擦を語るとき、誰の非透明性を守っているのかを問わなければならない。

第三に、すべての摩擦が経験を豊かにするわけではない。トラウマ、飢え、差別的な暴力は経験を破壊する。デューイの抵抗肯定をそのまま行政に移植すると、申請の困難が「人間を鍛える試練」として正当化される。カントの摩擦は水平的・相互的な競争であり、行政の摩擦は垂直的で、制度が一方的に課す。この混同を解かなければならない。

だから、守るべきは「摩擦」一般ではない。学習・開示・判断・責任の条件を満たす摩擦だけである。条件を満たさない摩擦は、必要なのではなく、単に負担だ。そして、その条件を満たすかどうかは、摩擦を負担する者ではなく、摩擦を設計する者が決めがちだ。ここに摩擦の政治がある。

11. 結論:摩擦は消すものではなく、配るものだ

最初の問いに戻る。摩擦は、なぜ必要なのか。

答えは、摩擦が一般に必要なのではない。摩擦は、判断と異議のための時間を確保するときにだけ必要である。 そして、その時間を誰が得るかは、設計の問いである。

デジタル化は、摩擦を消していない。測定できる摩擦から、測定できない摩擦へ移している。 職員の事務時間、保険者の審査コスト、事業者の一次対応コストは削られ、市民の待ち時間、患者の治療放棄、利用者の諦めが増える。AIはこの移動を加速し、否認の速度だけを上げる。

だから、問うべきは「摩擦を減らすか」ではない。「どの摩擦を、誰のために残し、誰が異議を唱えられるか」である。

設計原則は二つある。可逆性——やり直せるなら確認を減らし、取り返しがつかないなら摩擦を残す。声——その摩擦が異議申立てを支えるか、疲弊させるか。この二つで、摩擦の全廃でも礼賛でもない第三の道が見える。摩擦の民主化である。誰が負担し、誰が決め、誰が異議を唱えられるかを、測定し、公開し、変えられるようにする。

摩擦のない社会は、判断のない社会である。だが、摩擦だらけの社会は、声のない社会である。

問うべきは、摩擦の量ではない。その摩擦が、誰の時間を守り、誰の声を消しているかである。

12. 読書案

  • John Dewey, Experience and Nature(1925)/Art as Experience(1934)/Logic: The Theory of Inquiry(1938)。抵抗と探究の哲学。
  • Martin Heidegger, Sein und Zeit(1927)§15–16。道具の故障が世界を開く。
  • Hannah Arendt, The Human Condition(1958)/Lectures on Kant’s Political Philosophy(1982)。複数性と判断。
  • Byung-Chul Han, The Transparency Society(2012)。透明性と滑らかさの暴力。
  • Cass Sunstein, Sludge(2021)。不要な摩擦の測定と監査。
  • Albert O. Hirschman, Exit, Voice, and Loyalty(1970)。声と退出のコスト。
  • Donald Moynihan & Pamela Herd, Administrative Burden(2018)。行政負担の政治学。

13. 参考資料

思想

  • Kant, Idee zu einer allgemeinen Geschichte in weltbürgerlicher Absicht(1784)
  • Dewey, “The Reflex Arc Concept in Psychology”(1896)/Experience and Nature(1925)/Art as Experience(1934)/Logic(1938)
  • Heidegger, Sein und Zeit(1927)/「技術への問い」(1954)
  • Arendt, The Human Condition(1958)/Lectures on Kant’s Political Philosophy(1982)
  • Han, The Transparency Society(2012)/The Burnout Society(2010)
  • Sunstein, Sludge(2021)
  • Hirschman, Exit, Voice, and Loyalty(1970)

制度・統計

※ポンドはレート未取得のため円換算していない。ドル・ユーロの換算が必要な場合は、2026年10月24日付の時事通信7時現在の為替(1ドル=156円90銭前後、1ユーロ=175円72〜73銭)による。

14. 画像の利用について

アイキャッチおよび図1・図2は筆者作成のイメージ図・チャートであり、その元データの出典は各figcaptionのとおり。

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